COLUMN子育て支援だけじゃない! PMS対策、不妊治療まで~働く女性の健康を支える企業制度~

「女性活躍推進」が国を挙げて叫ばれる昨今、2022年には「働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会」の実現を目的として、女性活躍推進法の改正が行われました。ライフスタイル、ジェンダーの多様化と同時に、進み続ける働き方改革は人事制度・福利厚生制度の根幹からの見直しを迫っています。社員が安定的に高パフォーマンスを発揮するためには、安心して働ける職場づくりが必須課題。 前回はワーキングマザーの復職率を格段に上げた企業制度について特集しました。今回は引き続き、働く女性の健康面を支えるフェムテック制度を中心にさらに深堀していきます。

フェムテック制度を立ち上げ、PMSや生理痛によるパフォーマンス低下から脱却

某大手IT企業では、「生理休暇」という名前を廃止し、女性社員が取得する全ての休暇を「エフ休」という名前に変更。そして、生理だけでなく、つわり、婦人科疾患、更年期症状など女性特有の体調不良の際に使えるように、有休の特別休暇を月に1日追加。 女性特有の疾病などは当人にしかわからない上に他人には知られたくないものなので、これは多くの女性の健康支援に繋がる名案です。
宝島社の「もっと話そう! Hello Femtech」プロジェクトが実施した「フェムテックに関する意識調査」のアンケートにて、 「企業または団体で働いている方で、フェムテックに関する福利厚生があるのに利用したことがない方は、その理由を教えてください」 という質問に対して以下のような声があがっている。

 

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  • 上司に生理を申告してまで無給(生理休暇)で休まない
  • 男性社員が多く、使いにくい、相談しにくい(話しづらい)
  • 誰も取っている人を見たことがなく、報告する上司も男性なので言いづらく、やはり取りづらいイメージがある・月経困難症にてピルを処方されており、生理休暇を取得しなくてもなんとかなっているため。しかし、ピルの代金は気になるのでピル代補助があればよかったと思う

引用:PRTIMES 生理休暇、更年期障害etc.フェムテックに関する福利厚生の充実を求める声が9割越!

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「生理休暇」というネーミングを変えるだけではなく、女性が取得する全ての休暇に該当させることで、どんな理由で休むのかが分からないように配慮されています。言いづらさを無くすことで女性特有の事情による休暇の取得がしやすくなっています。

また、上記アンケート結果でも意見があった “ピル代補助” に関して、オンライン完結型の低用量ピル服薬支援サービス「mederi for biz」(法人福利厚生)を利用し、プライバシーに配慮して会社側が利用者を特定しない形で費用負担を行っている企業もあります。
該当サービスには提携医療機関の産婦人科医によるオンライン診断も不随しており、対面での診療が必要になった場合は提携医療機関への紹介状を作成し、スムーズな診療・検査もサポート。スマホで気軽にオンライン診断を受けられるため、会社を休んだり早退したりしなくても仕事の合間に受けることができるというメリットがあります。

生理痛を我慢しながら鎮痛剤を服用してどうにか仕事をこなしている女性は多いでしょう。ピルの服用によって、服用前は「横になって休息したくなるくらい仕事に支障をきたしている」という意見が過半数だったのが、ピルの服用を始めてからは同様の声が1.5割へと大幅に減りパフォーマンスが向上したという導入企業の例も!
福利厚生制度になったことをきっかけに、女性が自身の健康と身体の状態に目を向けるきっかけにもなるでしょう。 経済産業省の発表によると女性特有の月経随伴症状による労働損失は4.911億円と試算されています。※1「健康経営銘柄」の要件にも「女性の健康保持・増進に向けた取り込み」が追加されるなど、企業にとって女性の健康への取り組みは必須課題となっているのです。

※1参考:健康経営における女性の健康の取り組みについて

出産・育児・子育て支援だけ? 晩婚化と共に「不妊治療」と仕事の両立を希望する労働者が増加

すべての社員が納得できる人事制度を作るのはなかなか難しいことでしょう。例えば子育て支援を社内に取り入れようと力を入れると、子どもを持つつもりのない社員や若手社員は「自分には関係のない制度」だと思ってしまいがち。
「同僚が子どもの都合で休むことが多くて、その分、自分にしわ寄せが来ている。必要な有休を取ることもままならない」 と嘆いている独身社員の声もよく耳にします。また、不妊で悩んでいる女性社員にとってはデリケートな問題であるため、メンタルが落ちる事にも繋がり職場に居づらくなるということもあります。
晩婚化が進む今、「不妊治療」は他人事ではなくなりつつあります。

厚生労働省は、不妊治療と仕事の両立が可能な職場環境の整備推進を目的として、既存の支援ツールである「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」「不妊治療連絡カード」を改訂しています。

画像出典:厚生労働省ホームページ

「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」によると、不妊治療の検査や治療を経験した夫婦は全体の4.4組に1組の割合にあり、2022年4月1日から不妊治療の保険適用も始まったことから、不妊治療と仕事の両立を希望する労働者は今後ますます増える見込みだとあります。

しかしながら、不妊治療をしていた(またはしている)人の意見として、「仕事との両立が難しい」とした人の割合が87%となっており、「両立できずに仕事もしくは不妊治療を辞めた、または雇用形態を変えた」人の主な理由としては「精神面で負担が大きいため」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きいため」「通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しいため」ということが上位に挙げられています。※2

※2参考:不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業

 

不妊治療をしている(または予定している)労働者が会社や組織等に希望することとしては、 「不妊治療のための休暇制度」や「柔軟な勤務を可能とする制度(勤務時間、勤務場所)」「有給 休暇を時間単位で取得できる制度」が多く挙げられています。
また、「有給休暇など現状 ある制度を取りやすい環境作り」や「上司・同僚の理解を深めるための研修」等もニーズがある模様。
しかし、実際に不妊治療に特化した制度がある企業は19%と低いのが実情です。

では、どんな制度が取り入れられているのでしょうか?  一番多く導入されている制度は「不妊治療のための休暇制度」ですが、福利厚生の一環として不妊治療の費用補助や治療に関する相談ができるサービス「Progyny」導入した日本企業の例もあります。
該当企業の社員は、「体外受精」や「卵子凍結」などの治療費を、無期限で一人あたり最大約260万円まで補助を受けることができます。さらに、Progyny社のパーソナルサポートにより、友人や知人にも相談しづらい悩みの相談をプロにすることが出来、精神的なケアも受けられます。Progynyは米国の企業ですが、「Google」「Facebook」「Microsoft」などの先進企業と契約しており、その契約継続率はほぼ100%とのこと。
この制度導入により、社員は高額な治療費を気にすることなく、精神的にも安心して適切な不妊治療を受けられる体制が整えられました。

いかがでしょうか? 企業にとって、女性の健康経営に力を注ぐことによって、離職する人材を減少させ、ノウハウや人的ネットワーク等の喪失を防ぎ、新たな人材を採用する労力や費用の増加を回避することができます。そして、社員が働き続けやすい職場づくりを行うことは、安定した労働力の確保、社員の安心感やモチベーション、パフォーマンスの向上へと繋がっていきます。
TUDOIでは、女性が働きやすい企業制度について今後もお届けしていきたいと思います。

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MINA

仕事もプライベートも充実させたい派。転職してデスクワークに励む毎日。やっと仕事も板についてきたかなぁ。

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