「好きなことを仕事にしたい、自分の才能を活かして生きていきたい」そんな風に1度は考えたこと、ありませんか?
時代の変遷と共に働き方は多様化し、これまでは「良し」とされてきた、大手企業の安泰神話も形骸化しつつあります。AIが台頭していくこれからの時代、生き残りをかけてキャリアの見直しを図っている方も多いのでは? 「自分もフリーで活躍してみたい」と思いつつも独立することに1歩踏み出せないでいる方もいるかもしれません。
今回は、フォトグラファーとして独立して5年を迎えた井上綾乃さんに、フリーランスとしての生き方について、マネープラン、仕事を続けて行く上でのマインド、アート作品と仕事の違いについてなど、貴重なお話を沢山お伺いしました。
― 現在、フォトグラファーとして独立してお仕事されているとお聞きしましたが、ここまでのキャリアはどのように築かれてきたのでしょうか?
はい。日本大学芸術学部の写真学科を卒業して、すぐに広告撮影の師匠につきました。3年ほど修行させていただいたのですが、そこでかなり業界のことを学ばせていただきました。
当時はわからなかったのですが、大学出たてで、なんの経験も無いのにちゃんとした師匠につけることは稀なので、ラッキーでした。
― フォトグラファー業界とは、どのような場なのでしょうか?
かなりのパワハラ・モラハラの世界です(笑)男性だと殴られたりしている人もいましたね。現在はもう少し緩くなっていると思いますが…私の師匠は、業界ではかなり人格者で優しい方だったので、「あの先生のところに付けるなんて幸せだよ」と言われたりしましたが、基本的には “師匠のいう事は絶対” です。
皆で話をしている時も自分の発言はあまりしないですし、「アレやって、コレやって」という指示はしてもらえないので、師匠の機嫌や視線の動きなどで察して動くことが求められます。人間性や、フリーでやっていく上でのコミュニケーション能力など、色々と訓練され多くを学びました。日常生活でも役立つ気遣い的な部分は、そこで相当鍛えられました。あとは労働時間も長く、朝から深夜まで、または朝から朝まで働くなんてこともあります。
― なるほど…独特の世界のようですね。独立は元々視野に入れていたのでしょうか?
はい。元々1人でやっていきたいと考えていましたが、ある程度の実力をつけることや、お仕事をいただける土壌を開拓するのには時間がかかりました。
師匠の元から独り立ちして、全く写真と関係ない仕事をしていたりもしました。飛鳥Ⅱという船での撮影や、不動産の会社に入り物件撮影など、色々なお仕事をさせてもらいましたが、「やっぱりもっと深く写真に関わる仕事がしたい」と思いフォトグラファー職を募集している写真の会社にご縁をいただき入社し、そこでも4年ほど働きました。
― では、その会社にいる間に、独立に向けてご自身のお客様を作っていったのですか?
あまり出来ていなかったですね(笑) なのでフリーになり立ての頃は、先輩のアシスタントの仕事をしたり、友人の飲食店でアルバイトをしたりしながら生計を立てていました。
1つ1つの仕事を丁寧にこなしていくと、リピーターさんになっていただけたりして、少しずつお仕事が増えていきました。それを繰り返して、今がある感じです。
ご紹介だったり、色々な案件を持っているクライアントさんから合いそうな案件をいただいたりもします。自分から携わりたい仕事があれば、是非やらせてくださいとお声がけさせていただくこともあります。
―「1つ1つを丁寧に」とても大切ですね。独立に向けて苦労した面は、お客様づくりの部分でしょうか?
そうですね、色々な被写体を撮れる技術力がないと、仕事が来ないというか…初回はできたとしても2回目はないです。会社にいた時は、会社としての看板が守ってくれるのですが、独り立ちするとそうはいきません。自分の力が全てです。
お金を貰えるための撮影とは何なのか、というのを技術やそれ以外の部分でも、模索しました。今でもずっと勉強だと思っています。
―雇われ時代と独立した現在の違いについて教えてください。
楽になりましたね。例えば、電車に乗る、朝礼をする、制服を着るなど、皆と同じことをするということが性格的に合わなかったんです。あとは自分で、「仕事をする・しない」を自由に選べるようになったのはすごく有難いことだと思っています。
自分に来た仕事はまずは引き受けようと思っているのですが、それで嫌な思いをしたり、どうしても合わないなと感じたりした場合は、次回からは自分で選択することができます。なので、人間関係のストレスも減りました。
― 井上さん以外にも同じ師匠に付いていた方がいると思うのですが、独立していった人とそうではない人の違いはありますか?
そうですね、人にもよりますがフリーでやっていく方が、圧倒的に金銭面が潤うんです。会社員だと高めのお給料だとしても大体が固定給+αなので、自分でやっていく方が、利益が高いです。ただ、リスクはあります。
知り合いの方で、3か月仕事がないということもありました。ただ、1つの案件の金額が大きい場合があるので毎月コンスタントに働かなくても収入的には問題ない。その人の仕事のスタイルにもよりますね。
フォトグラファーはだいたいの方は独立していますね。まれに会社員に戻る方もいます。
社保や福利厚生等、自分で考えなくても良いので…こればかりは、どちらが合っているのかは性格の問題だと思います。
― お仕事の無いときや、不安定な時はどう乗り越えてきましたか?
これはもう、心が穏やかになるようにするしかないんです。本来そういう時には営業に行った方が良いのですが、そんな気持ちにもなれないんです。
「仕事がなくてどうしよう」という不安な時や「今月仕事が少ないな、ピンチ」という時、これは乗り越えたから分かるのですが、開き直って遊んだり、別のことをしたり、精神に良い事、運動だったり何かの役に立つ勉強をしたりして次の波を待つ感じです。
― 意外な答えですね!「波を待つ」ですか。
そうですね、不安定というか、安定はずっとしないなと。懇意にしていたお客様の撮影も予算の関係で無くなったり、また想像もしないところから仕事が入ってきたり、色々です。季節労働的な側面が強いので、仕事の波はあります。3年くらいやった時に流れもわかってきました。
なので、あまり一喜一憂しないで良く寝たりします! そうしているうちにまたお仕事が入って来るようになりました。自分の意識を充足に向け、心を中庸に置くように、常に努力をしています。暗く考えそうになったら、思考を一回遮断する感じで、寝るのが一番です。
営業もしないとなぁと思うのですが、これまであまりしてきていないのでそこは課題ですね。
― これまで続けてきての「壁」はありますか?
そこに関しては、仕事って海の生き物のようなもので、捕まえたと思っても逃げたり、捕まえられなかったり、それでも海の中には色々な生き物が生息しています、なので無限に仕事は存在しているんです。
なので、どうしてもやりたくない仕事以外はどんな案件でも受けていこうという気持ちになりました。お客様には本当に恵まれているなあと思います。
― 最近のお仕事と井上さんの一番得意な被写体について教えてください。
最近は新規アパレルブランドビジュアル撮影や、ラグビーチームの試合の撮影をしています。師事していた先生が、元々印刷会社のカメラマンだった為、幅広く色々な仕事を見させていただいたのはとても勉強になりました。
得意なものは、人物ですかね。撮っていて楽しいのは心象風景のような、抽象的な写真ですが、仕事としてそれを撮る案件は少ないので自分の作品として撮っています。
― なるほど、作品(アート)と仕事の違いについて教えてください。
それは悩むところでもありますね、撮りたいものをただ撮っていても仕事としてはズレて来るんです。
フォトグラファーとしてお仕事をいただく場合は、お客様の「こういったものを撮りたい」という想いが確実に存在しているんですね。私からご提案することもありますが、ある程度方向性が決まっているんです。
「この人であれば好き勝手に撮ってもいいよ」と言われるような方もまれにTOPフォトグラファーの中にはいますが、まだ私はその領域には達していないので、クライアントワークと自分が撮りたい写真にはズレがありますね。
そこを上手くすり合わせて融合させていきたいなとは思っています。
― 今後のキャリアプランについてもお伺いしたいのですが、法人化も検討されていますか?
はい。合同会社にするか株式会社にするか、そのあたりに詳しい方がいるので今相談しています。将来的に、自分が撮影するだけではなく他に形にしていきたいことがありまして。
― どんなことですか?
例えばですが、色々な作家さんの写真を集めてホテルに飾るようなサブスクを作るとか、インバウンドが増えているので、インバウンドの方向けの出張撮影サービスとかを考えています。そうするとやはり、1人で撮影するというよりは、どこかでリソースを確保する必要がありますし、会社化した方が、メリットが大きいなと考えています。
― フリーやられていく上でかかる維持費、そして今後、ご結婚や出産などを考えたときにはお仕事をお休みすることもあると思いますが、そのあたりのマネープランについてはどのように考えられていますか?
まず、独立して年金や税金等、今まで会社が払ってくれていたものを自分で払うためには、会社員時代の給料だと足りないことに気づきました。なので、初年度は会社員時代の給料の1.5倍を目指していました。生きていくためにかかる法律的なお金がこんなにあるんだなと思い、勉強しましたね。
今後のライフプランについては、自分にとってどんな相手が合うかというのがやっと分かってきたので、あまり多くは望まず、自由でいさせてくれてお互いに高め合える人が良いですね。子供が欲しいので、40歳くらいまでには出産をして、そこからまた撮影のお仕事も入れると思いますが、今は細かいことは考えていないんです。「何とかなるさ!」と思っています。
―「何とかなるさ!」という精神がこれまでお仕事を続けてこられたポイントなのかもしれないですね。
そうですね。人生においてトラブルに見舞われることが多かったのですが、その状況を楽しめるようなメンタルになってきました。トラブルをチャンスと捉えています。インドで無一文になったことがあり、本当に大変でしたが、精神の修行になったとポジティブに受け止めています。このお仕事を続けてこられたのは、写真以外の仕事をしても飽きてしまうことに気付いたから。やっぱり写真の仕事が面白い。写真が好きだなあと。だから「写真」に出会えたことに感謝していますし、続けていられるのだと思います。
― これからフォトグラファーになりたい人、そしてフリーランスでやっていきたい人へのメッセージをお願い致します。
好きなことを仕事にしていていいな、など言われることが多々ありますが、なかなか容易ではありません。
ただ、自分が好きでやっていることなので、どんな時も前向きに、自分の信じてやってきたものを信頼してやっていく。
フォトグラファーになりたい人は、とにかく写真を撮る量をどんどん増やしてください。スマホでも良いので、繰り返していくと絶対に上達していきます。あとは色々なタイプのフォトグラファーがいるので、自分がどうなりたいか目指す先を設定するといいと思います。
フリーになりたい人は、フリーになったその先のワクワクを考えると、モチベーションが続くと思います。もちろんすごく大変なこともありますし、自由だけど苦しい時もあります。ただ、楽しい事の方が多いです。人生は自分が思うように創造できます。
― 勇気になる言葉です。長く続けてこられている方から聞くと説得力があります!本日は貴重なお話をありがとうございました。
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