今から15年前の2006年に放送された、「誰よりもママを愛す」(誰ママ)というドラマをご存じですか? 家族を愛する専業主夫が主人公で、そこで私は初めて『主夫』という存在を知りました。
長引くステイホーム期間で料理や洗濯、掃除といった家事に目覚める男性がいるそうですが、『主夫』はなかなか身近には見当たりません。「やっぱりあれは、ドラマの中の話か」と思っていたのですが…。
なんと! 社内のNさんは前に主夫をしていたという噂が。
Nさんに会社員から主夫へ、そしてまた会社員へという働き方について伺いました。
― 今日はよろしくお願いします!
資料をもらって思い出したけど、僕の中では「主夫」のドラマといえば、阿部寛さんの『アットホーム・ダッド』だなー。
― 2004年に放送されたドラマですね! 誰ママとも放送時期が近いですし、もしかして、当時に主夫ブームがあったのかもしれないですね。
Nさんは、専業主夫をされていたと聞いたんですけど…。
新卒で就職してSE系の仕事をしてました。当時は夜間作業もあって毎日遅くなってましたね。結婚して子供が生まれて、そこで人生観が変わる出来事があって、娘がすごく大事な存在になったんです。
仕事を続けていく中で、SE系の仕事だけじゃなくその他にも一通りの業務をしたんですけど、やっぱり夜遅くまで仕事で子供にもなかなか会えなかったりして。
当時、僕の妻は家で仕事をしていたんですがフルタイムで働かないかという話が来ました。
(妻は)「(フルタイムで)働きたい」けど、僕がこんな状況で妻もフルで働くとなると、子供はどうするんだ? と思って。
子供に寂しい思いをさせたくないというか、完全に僕のエゴですけど「親が一緒にいてあげたい」と思ったので、それだったら『家に入ろうかな』と思いました。
引退しよう、二度と働くまい
家に入るというよりも、僕はもう引退をしようと思ったんですよ。
― そうなんですか!?
もちろん転職も考えたんだけど、当時はサラリーマンとして働くなら今の会社よりも良いところはないという判断に至ったので、じゃあ、どうしようかな? と思ったときに「引退しよう」「二度と働くまい」と思って、それで専業主夫になったんです。
― なるほど~。
だから、今働いているのが僕は不思議(笑)
― (笑)
(専業主夫になったのは)子供が小学生くらいだったから、今から10数年前ですかね。
子供が家でずっと独りというのが心配で・・・あと、独りで夕飯を食べさせるのが絶対に嫌だったというのが有ったかな。今振り返ると、そこまで拘らなくても良かったかなとも思うけど。
― 今だったらスマホもあるので、位置情報も正確に分かったりしますけど…。
僕も当時のKIDS用携帯持たせてましたよ。でも、今と違って(位置情報の)精度も悪かったりするし、「こんなところにいるの!」と思ったら全然近くにいたりとかね。(笑)
― (笑)
自分の意志というより、周囲の環境にあわせて変化していった
― 専業主夫期間はどれくらいだったんですか?
高校に入るまでかな。中学までは(子供が)塾に行きたくないって言っていたので、勉強を僕が見ていました。各教科の理解度に応じて細かいカリキュラムを作ってやらせたりして・・・ 受験の頃は常駐している家庭教師という感じでした。(笑)
― えっ! かっこいい。
そしたら、子供が高校に入ったらすごく暇になったんですね。(笑)
「じゃあ、稼ごうかな。」と思って、近くでバイトしました。肉体労働をしてみたら体力がなくなっていることを痛感しましたね。
やっぱり、頭を使う系じゃないとだめだなと思っていた時に(今の会社に)ちょうど声をかけてもらったんですよ。
― そうなんですね。
しかも、かなり我儘な働き方を受け入れてくれて!
― (笑)
時短だったので夕飯が作れる時間に帰れるし、こんなにいい条件ないと思いましたね。
当時はアシスタント職だったけど、3か月たったくらいで「時短でいいので社員になりませんか?」と言われて、それならいいかなと思って、3年くらいは時短だったのかな。
大学生になったら夕飯を用意しなくても自分で食べてきたりするし、どんどん暇になったので、じゃあフルタイムになろうと、それで今に至るんです。
だから、自分の意志で何かというよりも、周囲の状況にあわせてうまい具合に働き方が変わった感じなんですよね。
― 人に歴史ありですね!
次の私の業務は『主夫』という役割分担
― 今振り返って、主夫をしていて良かったなと思うことはありますか?
僕は子供と結構仲がいいんですね。それが、主夫をしていたからなのかは分からないけど、少なくとも何かしらのいい方向には働いていたのかなと思います。特に反抗期もなく素直に育ったので、うまくマネジメントできたということですね。(笑)
― (笑)
あとは、実は僕自身はそれまで全く家事をしてこなかったんですよね。
― そうなんですか!?
うん、全く。当時は「男は家事をしない」って感じの世代だったから、全部まかせっきり。一人暮らしの時にカレーを作ったりはあるけど、それとは全然違うし。
― 家族のために作るのは全然違うって言いますよね。
全然違う! 献立考えたり、小さい子供にちゃんと食べさせなくちゃとかね。
― でも、(家事を)やってこなかったのに主夫になろうとなったのがすごいです。
役割分担としか思ってなかったんですよね。仕事をやっていくと、いろんな役割分担が出てくるじゃないですか。役割によって得意なこともそうじゃないこともやらなくちゃいけない。(会社員だった時に)それをたくさん経験してきたから、その延長で「次の私の業務は『主夫』という業務。苦手なところは克服しなきゃいけない。だから、勉強しなきゃ!」とか、ある意味仕事の延長みたいな感じでした。
しかも、今までの自分の意にそぐわない異動ではなく、自分で選択した異動ですしね。
― 確かに。
だから、納得感がとてもありました。自分で選んだし、ちゃんとやらなきゃって。
後は、もう外で働きそうにないっていう覚悟があったのも良かったのかもしれないです。「こんなことするくらいだったら、働いた方がいいや」という気持ちにはならなかったから。
時短で働いている人の歯がゆさがすごくよく分かる
― 今、Nさんはマネージャーという立場ですが、主夫をしていたからこそお母さん社員の気持ちが分かるというのはありますか?
それは多少なりとも有るとは思います。夕飯の支度をするのがどれだけ大変かとかね。
あとは、時短で働いている人の歯がゆさがすごくよく分かる。仕事が残ってても帰らなくちゃいけないじゃないですか。
― 帰ってその後自由にしている訳じゃないですもんね。むしろ、その後から新たに仕事が始まるというか。
そうそう。
― 実際に経験しないと人ってなかなか分からないものですけど、そうやって理解のある人が上にいてくれるのはありがたいですよね。
「それは、Nさんだから分かるんですよ。」みたいなことを、お母さん社員から言われたことはありますね。
ライフプランにあわせたルートがある会社は、魅力的に思える
― もし、主夫になりたいという人が相談に来たら、どんなことを伝えますか?
そうだなー。まずは「ほんとにそれでいいの?」かな。
本人が本当に心からやりたいなら、やればいいと思うから、本当にそれだけだと思う。
― 先ほど出てきた「納得感」が大事ということですね。
そうそう。
とはいえ、僕も当時親には「主夫をしています」とは言えなかったな。僕の親世代には絶対理解してもらえないと思ったので、(親には)家にいながらなんとかうまくやっているよって、オブラートに包んで伝えてました。
― 今だったら、言えそうですかね?
僕らの世代が親なら、まだ分かるかもしれないね。
というか、今のようにリモートワークが浸透していたら、専業主夫になる必要は無かったかもと思います。僕は(仕事を)辞めなかったと思う。家から職場まで行って、帰ってきて家のことをするというハードルが高かったから。
― 働き方の変化ですね。
これだけ多様な働き方があると、専業主婦も主夫もなる必要がなくなるかもしれませんね。
― 特に働き続けたいと思っている人には、そうなると良いですよね。
会社がその人のことが必要で残って欲しいと思うなら、そういう道をつくってあげればいいと思う。
若いうちはこういう働き方で、旦那さんでも奥さんでも子供をメインに見る方にはこういう働き方、子供に手がかからなくなったらこういう働き方、子供が独り立ちしたらこういう働き方でってルートをつくって「うちの会社、こういうルートを持ってますよ」って言ったら、すごく魅力的にうつるんじゃないかな。
― 確かに。しかも、男性でも女性でもどっちでもとなったら特に。
そうそう。
― 今日は、たくさんお話しを聞かせていただきありがとうございました!
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